論理的な意思決定のための6つのプロセス

ビジネススキル基礎

個人の人生においても難しい意思決定を迫られる機会が増えてきました。

世界はどんどん変化しており、かつそのスピードは増しています。
同じことをただ繰り返しつづける、というわけには行かなくなってきました。

例えば職業についていえば、大企業であっても絶対に安泰ではなくなってきており、一つの会社に居続けるだけでなく先を見越した新たなチャレンジをすることも重要な選択肢となってきました。

社会に出てからみなさんが立ち向かう問題は、学生の頃に解いていた問題のように「絶対的な正解のある」ものではありません。
何とかなるだろう、とタカをくくりエイヤっと下した決断が失敗につながり、後悔したことのある人も多いのではないでしょうか。
その一方で、失敗したくないからと慎重になりすぎ、石橋をたたくだけで前に進めていない人もいるのかもしれません。
ですが変化のスピードが速くなっている現在においては、何も決めないことは「ただ流されるだけの人生」となりかねません。
よりよい意思決定をすることが、生きる上での重要度を増しているのです。

筆者はコンサルタントとしてビジネスの中での意思決定に携わり、その繰り返しの中で個人が行う意思決定にも使える方法を学びました。
本記事ではその方法について紹介します。

論理的な意思決定のための6つのプロセス

以下に沿って手順を進めてください。

  • (準備)意思決定のためにどれだけ時間を使うべきか、先に基準を決めておく
  • 手順1. 影響の金銭的大きさ・価値をもとに意思決定のために使う時間を決める
  • 手順2. 評価観点を先に決める
  • 手順3. 制約条件の特定
  • 手順4. 選択肢の候補出し
  • 手順5. 評価につながる情報の収集
  • 手順6. 評価の実施、最終決定

それぞれ、詳しく見ていきます。

(準備)決断のためにどれだけ時間を使うべきか、先に基準を決めておく

今後、いろいろな意思決定をしていく前に、ちょっとした準備をしておきましょう。
その準備とは、「決断のためにどれだけ時間を使うか、決定の影響度に応じた基準を決めておく」というものです。

[aside type=”normal”] 補足
このプロセスは、毎回の意思決定においてその都度行うものではなく最初に一度終わらせておけばよいので、「準備」として以降のプロセスとは分けました。[/aside]

ちょっとわかりづらいと思いますので補足しますね。
例えば、今日のランチは何にしよう?と考えるときに、購入するマンションをどれにするか選ぶかのごとく悩んで時間を使ってしまうと、昼休みが終わってしまいますよね。
逆に、数千万円するマンションを購入するときに、定食屋さんで昼食のメニューを決めるように即決すると、後になって「知らなかった!」という情報が見つかるなどして後悔することになりかねません。

要は、意思決定の影響度の大小に応じた、適切な時間を費やすべき、ということです。
そのために、「このくらいの影響度なら、このくらいの時間を使おう」という基準を決めておくとよいのです。

ここで、「影響度ってどうやって評価するの?」と疑問に思われたでしょう。
答えは、「お金に換算したときの金額の大きさ」で評価するとよいです。
モノやサービスの購入時の意思決定であれば、購入金額そのものを用いてください。
それ以外の場合であれば判断の影響の大きさを少々無理矢理でもいいので金額に換算します。

この基準は、意思決定者本人の経済的状況などによっても変わってくると思います。
例えば、私であれば1万円の買い物、となれば結構迷いますが、アラブの石油王みたいな人であれば1万円であれば迷わず即決、でしょう。
そのため、意思決定されるご本人で基準を決めていただく必要があります。

ご参考までに、筆者本人は以下のような基準を設けています。
どのくらいの基準にするべきか迷う、という方は真似をしてみてください。

影響度(お金に換算)意思決定に費やす時間の目安
千円以下直感でノータイムで決めてOK
千円以上〜1万円未満5〜10分程度
1万円以上〜10万円未満1時間
10万円以上〜100万円未満5時間
100万円以上〜1000万円未満丸1日
1000万円以上〜丸5日

この基準はその都度決めるものではないので、今後、楽に判断するために先に決めておきましょう。

手順1. 影響の金銭的大きさ・価値をもとに判断のために使う時間を決める

それではここからは、「何かを決めるぞ!」というときに行うべき、具体的な手順に入っていきます。

まず最初の手順です。
意思決定の影響の金銭的大きさを評価し、(準備として紹介した)基準に照らし合わせて、判断のために使う時間を決めます。

ここで決めた時間が、以降の手順に対し使える時間の目安と考えてください。
これを守ることで、軽微な決断なのに時間を使いすぎたり、重要な決断なのにいい加減に決めてしまうことを防ぎます。

事例 引っ越し先の物件探し

例として、「独身の方が引っ越し先の物件探しをする」、というシチュエーションを考えます。
※ 今後の手順の説明においても、この例を使っていきます

この意思決定の影響度をお金に換算します。
まず初期費用が数十万円かかりますよね。
プラス、数年にわたり住むとすると、その期間の家賃も合わせると合計100万円を超えます。

⇒ 影響度は「100万円以上〜」の範囲に入るので、今回の意思決定にかける時間は「丸一日=24時間分」を目安にすることとなります。

[aside type=”normal”] 補足
この手順で判定された「時間の目安」が「直感でノータイム」であれば、以降の手順は飛ばし、いきなり決めてしまってよいです。[/aside]

手順2. 評価観点を先に決める

意思決定するにあたり、この先の手順で複数の案を並べて評価していくことになります。
ですがその前にやっておくべきことがあります。
それが本手順です。

評価をする際の観点とその中でも特に重視する観点を決めておきます。
決めた結果は記録しておきましょう。

これを先に決めておくことで、評価する際に思い込みや感情に惑わされてしまうことを防ぎます。

評価観点の決定

評価観点とは、「あなたがこだわるポイント」だと思ってください。

例えば婚活を始め、「これからいい結婚相手を見つけるぞ!」と意気込んでいるとしましょう。
そのとき、さすがに「まったくもって無条件でいい」という人はいませんよね。
何らかのこだわるポイントがあるはずです。
これは人それぞれでしょうが、例えば「価値観の近さ」「優しさ」「性格」「収入」「外見」などが候補でしょうか。
このような「今回の意思決定で自分が重視するポイント」を先に決めて記録しておく、というのが本手順で行うことです。

評価観点は多すぎると評価が大変になるので、4〜6個くらいがよいと思います。
多くても8つくらいまでをおすすめしますが、どうしてもこだわりがあるなら増やしていただいて構いません。

こだわる観点は人それぞれですし、また意思決定のお題によっても全然変わりますので、ご本人で決めていただくことになります。
悩む方もいらっしゃると思うので、いくつか例示しますね。

例① モノやサービスを購入するとき

  • 金額
  • 機能、使いやすさ
  • 見た目の良さ
  • ブランド力、安心感
  • 汎用性の高さ、使い回しやすさ
  • 持ち運びやすさ

例② 問題への対応策を決めるとき

  • 効果・影響の大きさ
  • 実行のしやすさ
  • 実行にかかる時間
  • 関係者の感情的抵抗感

重視する観点の決定

また、洗い出した評価観点はすべてが同格ではありませんよね。
あなたが特に重視する観点があるはずです。
最重要の評価観点には記録表に目印をつけるなどして、わかるようにしておいてください。
※ 後の手順で実際に評価を行う際、最重要の観点に対しては点数づけの倍率を変えます

評価観点、重視する観点の記録

また、この先の手順では各種の情報収集や評価を行っていきますが、その際に使う記録表に対し本手順の結果を書いておきましょう。

手間はかかりますが、この先の情報収集や評価を行う際に、「紙に書いて見えるようにする」という方法が有効です。

記録表はご自身で自由に作成いただいて構いません。
手書きでもエクセルなどの表計算ソフトでも、何でもよいですが、作るのが面倒であればフォーマットをPDFで用意しましたので、こちらをダウンロードのうえ印刷し、ご利用ください。

意思決定シートサンプル

事例 引っ越し先の物件探し

それでは引き続き、引っ越し先の物件探しの例をご紹介します。
考えた結果、以下を重視することとし、評価観点に決めました。

  • 家賃、初期費用の安さ
  • 最寄り駅からの近さ
  • 部屋の広さ
  • 部屋のきれいさ(最重要)
  • 収納の大きさ
  • 周辺環境の良さ

⇒ 上記を記録表へ記入します。

手順3. 制約条件の特定

何かを決める状況において、ありとあらゆる選択肢のことを考えていたらキリがありません。
検討に値しない選択肢はさっさと除外できるように条件を明確にしましょう。
そこで、本手順では「譲れない条件、守らなければならない条件」があれば先に洗い出しておきます。
結果は記録表へ記入します。

事例 引っ越し先の物件探し

冷静に考えて、以下が制約条件となることがわかりました。

  • 現在の懐具合を考えると、出せる家賃の上限は10万円

⇒ 記録表へ記入します。

手順4. 選択肢の候補出し

情報収集やアイデア出しを行い、評価対象とする候補を選び出し、記録表へ記入します。

対象がモノやサービスの場合は、Webで検索するのが速く、便利です。
それ以外の場合は、自分でアイデア出しをするか、詳しい人に相談するなどの手段を検討してください。

事例 引っ越し先の物件探し

ネットの住宅情報サイトを使ったところ、評価観点に対し高得点になりそうな物件が6つ見つかりました。

⇒ 記録表へ記入します。

手順5. 評価につながる情報の収集

選択肢それぞれに対し、評価に影響する情報を集め、評価表に記入します。

モノやサービスの場合、できるだけ現物を直接触ってみる、体験してみることが重要です。
Webの口コミなどの二次情報しか頼れない場合、その情報が「事実」なのか「意見」なのかには注意が必要です。
意見である場合はできるだけ複数の情報源を確認し、特定の人の意見に惑わされないようにしましょう。
専門家に意見を聞く場合は、極力中立の立場の人を選びましょう。

事例 引っ越し先の物件探し

ネットで分かる情報に加え、内見や物件周辺の散策を行い情報収集しました。

⇒ 結果を記録表に記入します。

[aside type=”normal”] 補足
手順4.と5.が一連の手順の中で、時間的に大きな比重を占めます。
今一度、手順1.の結果を思い出し、かける時間について「多すぎず少なすぎず」のバランスを心がけてください。[/aside]

手順6. 評価の実施、最終決定

選択肢それぞれに対し、各評価観点に対する評価を行い、結果を表に追記します。

前の手順で集まった情報に対し、1〜5点の五段階(※1)で評価を行います。
手順2.で「重視する観点」に選んでいる観点の評価は、1〜5点の評価結果に対し1.5倍(※2)したものを最終の評価点としましょう。
選択肢ごとに評価点を合算し、合計点がもっとも高い選択肢を結論として選びます。

[aside type=”normal”] ※1
評価の段階をもっと細かくする(例えば、0点から100点の1点刻みにするなど)のは構いませんが、逆に荒くする(例えば1、2、3の3段階)と、結果が「同点だらけ」になりかねないのでおすすめしません。[/aside]

[aside type=”normal”] ※2
重視する観点に対する倍率は変更しても構いませんが、高くしすぎると「その評価観点だけで結果が決まる」ということになってしまいます。
差をつけるにしても、最大は2倍くらいまでにしてください。[/aside]

この際、最高得点のものがある場合は、直感を信じひとつを選ぶ(ここまで冷静に調査・分析しているなら、どちらを選んでも結果に大差は生まれないはずです)か、もしくは時間が許すなら追加の評価観点を作り合計点に加えます。

事例 引っ越し先の物件探し

集まった情報を評価し、採点をしたところ以下の結果になりました。

例えば、物件Cの「家賃、初期費用の安さ」については、家賃が上限ギリギリの10万円であるため、評価は「1」としています。
一方で、物件Bは家賃が6.8万円と、上限に対し3割程度も安いため、評価は「5」をつけています。
このようにして、すべての採点欄を埋めていきます。

今回の例では、物件Eが家賃以外の評価でバランスよく高得点を取っており、結果として最高得点となりました。
よって、引っ越し先は物件Eに決めることになりました。

まとめ

論理的に意思決定を行うためのプロセスを紹介しました。

  • 手順1. 影響の金銭的大きさ・価値をもとに意思決定のために使う時間を決める
  • 手順2. 評価観点を先に決める
  • 手順3. 制約条件の特定
  • 手順4. 選択肢の候補出し
  • 手順5. 評価につながる情報の収集
  • 手順6. 評価の実施、最終決定

ポイントは、「多すぎず少なすぎず、適切に時間をかけること」、「思い込みや感情に惑わされずに合理的に比較できるよう工夫すること」です。
上記の手順に沿って進めれば自然とこれらポイントを押さえられるようにしてあります。
慣れないうちは時間がかかると思いますが、数回経験すればすぐに慣れます。
そうすると、何かを決めるとき頭の中に自然にマトリクスが描けるようになります。
ぜひ、チャレンジしてみてください!

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